「さあトーマス」大津公演に寄せて |
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中川 真 |
「さあトーマス」は即興パフォーマンスです。これまで、大阪、東京、徳島で計5回の公演をしましたが、ひとつとして同じにはなりませんでした。似て非なるものといった方がよいほど、表現の振幅が大きいのです。かなり明確なストーリー性ができたり、最後までカオス状態であったり。なぜなのかというと、約束事がほとんどないからです。いくつかの歌はテーマソングのように現れますが、それ以外の身体の動き、楽器演奏、言葉の掛け合いなどは、まさに即興的に紡ぎ出されます。その紡ぎ出された小さな動きが端緒となって、どんどん進行してゆきます。なのでどこに行き着くのやら、結末は全く分かりません。なんという無責任な作品なのでしょう。でも、そういうやり方を選んでいるのです。もちろん、他にも色々な方法があることは知っています。きちんとした芝居から見ると、「さあトーマス」は最も遠いところに位置しているといえるでしょう。なぜ、この方法を選んだのかというと、初めて私がこの障害ある人と出会ったときの強烈な印象に由来します。いままでに見たこともないダンス、聴いたこともないフレーズを、たんぽぽのメンバーは、ガムラン楽器を前にして軽々と提示してくれたのです。こう書くと、なんだか珍しいイキモノかカミサマを見たときみたいな感じですが、まさにそんな驚きだったのです(失礼!)。これはすごかった、すご過ぎた。彼女たちのこのオリジナルな感性と身体を大切にせなあかんと、反射的に思ったのです。 |
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