「さあトーマス」って? |
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2004年の秋から、ガムラングループ〈マルガサリ〉と社会福祉法人〈たんぽぽの家〉のメンバーとスタッフが、共同して舞台作品を作ろうとワークショップルームに集いました。そして半年かかってできあがったのが『さあトーマス』です。これまでに大阪(2005年4月、8月)、東京(2005年8月)徳島(2005年11月)で上演しました。
この作品は、障害のある人たちと、ガムランのグループが出会うことによって生まれる様々な新しい表現を、とことん追究したものです。もちろん追究には限度がありませんから、いつまでも未完成な作品です。決まった台本や楽譜を作ることなく、パフォーマーは常に舞台の上で即興的に演じます。鋳型にはめることなく、際限なく自由を求めます。それはしかし、パフォーマーにとってはとても大変なことです。障害のある人にはなおさらのことでしょう。 けれど、そこに私は新しい芸術が生まれると信じています。マルガサリはこれまで和太鼓や洋楽器の奏者など、多くの他ジャンルのアーティストと共演を重ねてきました。しかし、〈たんぽぽの家〉のメンバーと初めてセッションをしたときほどの衝撃は、それ以前に体験したことがありません。実に創造的な芸術の芽が潜んでいると思いました。障害者のアートといいますと、マイノリティ・アートとかアウトサイド・アートなど、差別的な呼び名で語られ、現代アートの流れのなかでは正当に評価されてきませんでした。私たちの活動がそういう状況を打ち破ることを願っています。そういう意味で、エイブルアート(可能性の芸術)なのです。 芸術をつくるのに、障害があるとか、ないとかというのは殆ど関係がありません。素晴らしい感性と情熱があればいいのです。敢えていえば、障害があることが利点になっているのではと思う瞬間すら、練習のときにはあります。はっとするような表現を障害のある人が生み、それをマルガサリがすくいあげます。延々とキャッチボールが続きます。そしていつのまにか、障害のある人ない人が自然に融合してしまっている、というふうになればうれしく思います。 もちろん、このような活動を続けていくためには、ケアスタッフによる大変なバックアップが必要です。むしろステージの外にこそ、この活動の真の柱があるのかもしれません。そういうこと一切合切を含めて、「さあトーマス」はあります。 |
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